小太刀賢のアーティチョーク茹でました

役者・小太刀賢が、日記のような週記のような、日々のよしなしごとをそこはかとなく書きつくるブログです

春のタンまつり「堕天のススメ」

みなさん、こんばんわ。

 

「たすいち春の短編まつり」、本日は「堕天のススメ」

 

出演者は、梅田優作、菊池泰生、北川理恵、熊谷有芳、小太刀賢、さんなぎ、中野亜美、星澤美緒、細田こはる。

 

僕はこの作品に一度出たことがあります。いつかのミラフェスでやった時で、役は同じく矢作くんでした。

 

初演は、たすいちの「宴」公演。この公演は今回と同じように短編集公演だったのだけど、その中で唯一の新作でした。これがもうね、面白かった。みんながはちゃめちゃに遊んでて、それが上手くセッションしていて、いいなぁやりたいなぁってその時に思った。

 

それからミラフェスで再演ってなって、これはぜひともやりたいと思って出たのですが、やってみるとこれが難しい。テンポ感とか役の操縦とか、結構四苦八苦して作り上げた記憶。結果的に面白いものになった気はするし、その当時の最大値は出したと思うけど、まだまだ実力不足だなぁと反省も同時に覚えたのでした。

 

そして今回「堕天のススメ」が演目として挙がって、こいつぁぜひとも再チャレンジしたいと思った。そなりに経験を積んだ自分がどう戦うことができるか、それを試してみたかった。

 

やってみるとやっぱり難しいなと感じたわけなのだけど、以前は気付けなかった作品の余白部分が見えてきて、なるほどこう演じたらいいのかな、ここはこうしてみようかななんて、前とは違うアプローチができて、前より奥行きを持って役作りできたかな、なんて思っている。

 

今回の注目ポイントはなんといっても、典子を演じたあみちゃんですよね。この作品、典子を中心に渦巻くようにキャラがあちこちから出てきて進んでいくので、どれだけ典子がその中心でどしっとしていられるかが大事だと思っていたのだけど、あみちゃんは四方八方からくるうちらを見事にさばいていた。

典子のキャラ設定としてもね、見た方ならわかると思いますが、あの設定に説得力を持たせられるって相当すごいことですよ。キャラに説得力を持たせつつ、それと同時に作品のテンポも作ってゆく。そんなことができるなんて、なんて恐ろしい子…!

個人的には、あみちゃんとがっつり芝居ができて嬉しかった。

 

あみちゃん以外みんな、演劇的体力が高かったですよ。そもそもの演劇という嘘があって、その上に大の大人が小学生を演じるっていう嘘が乗っかって、しかもデフォルメチックな要素も乗っかって、そんなマシマシのものを成立させるのって、演劇的体力?腕力で強引に作品をねじ伏せなくちゃならないと思うんですよね。作品の完成は、みんなのその体力・腕力の成せる技だったわけですよ。

 

最後に、かなり個人的な好きな部分を書いていこうかな。

 

ラストのあみちゃんが秀逸なのは当然として、最後近くに矢作くんと話している時の表情の変化が好きなんですよね。人間味が滲み出てて。

梅田くんも表情がいい。あんなに顔で語れるってのはすごいよな。見ていて飽きない。

泰生くんは、全力が故の振り幅の大きさ。先生に勉強を教えてもらっている時の演技は、想像したものの先にぐっと踏み込むので、何度でも見たくなる。

りえちゃんはそのパワフルさはもちろん好きなのだけど、はじめの方の一瞬固まっちゃうとこの表情の消え方が気持ちいい。

ゆかちんもラストが秀逸。それと、セリフに乗っかる感情の分量が絶妙で、どうしてそんな風に話せるのか不思議に思う。

さんなぎさんはその立ち方がもうすごい。これは典子の話なのに、さんなぎさんはさんなぎさんで自分のストーリーを背負ってそこにいるように見える。なのに前面に出るわけでなく作品との距離感もちょうどいい。

こはちゃんはあの役を成立させているだけですごいよね。でも好きなのは、「傷付いたなぁ」って言うときのちょっとキャラっぽくないとこ。そのセリフを聞いて、傷付けてごめんって自然と心の中で謝った。

みおさんは身体の使い方かな。「消えたい二人」でも思ったんだけど、どうしてその動きにしようと思ったのか、その動きにするに至った発想力がすごいなって思うんですよ。お客さんだったらついつい目で追っちゃうな。

 

なんかちゃんと言葉にできたかな。できてるといいな。

 

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(撮影:奥山郁)