小太刀賢のアーティチョーク茹でました

役者・小太刀賢が、日記のような週記のような、日々のよしなしごとをそこはかとなく書きつくるブログです

声色

みなさん、こんばんわ。

 

サイバレを振り返ってみて、稽古中や本番中に感じたことの一つを書こうと思う。

 

今回、役が役だからなのか、セリフを発するということを普段より意識して考えたように思う。

僕が演じた四方くん、彼は周りの女の子みんなからモテちゃうような男だ。いわゆるイケメン、に見えちゃうキャラ。人柄で魅力を伝えるというよりはそのイケメン的振る舞いで人を引きつける感じ。まぁそれも催眠術の成せる技ではあるのですが、それでも対外的にはイケメンっぽく見せなくちゃならない。

 

そのイケメンらしさを出すために、声の比重はだいぶでかいように思う。所作ももちろん大事だけどね、かといって声を蔑ろにはできない。

 

僕が選んだ声色は、言ってしまえばイケメンキャラが出しそうな声色、だいぶキャラクタライズさせたものでした。日常生活では出さないような声。

 

その非日常の声をどう日常に落とし込むか。地に足ついた声にするか。そこが最後まで悩みどころであった。いくら頭で考えてああでもないこうでもないとやっても、いざ口から空気が抜ける時には予想とは全然違う音が出ている。思考と実験。自分の体を使っての音色の実験。

そもそもがそういう日頃の小太刀と違う声色の人物はどういう人なのか。どういう生活をし、何を考え、どういう風に体を使うのか。その色んなつまみを右に左に回してチューニングしていく。そうやってようやっと体に馴染んだ声が出るようになった(と思いたい)。

 

あと今回稽古期間中、セリフをひとつ発することが怖いと感じる時が多々あった。いつも感じないわけじゃないのだけど、今回のように意識的に感じたのは初めてだった。声に着目して役作りしたからか、セリフを発する瞬間に、果たして今この身体状況でセリフを出して大丈夫だろうかと戸惑いが生じる。それで、自分が欲しいセリフの感覚より少し遅れたり間延びしてしまったりする。その感覚のジレンマに手を焼いた稽古期間だった。

 

その怖さをどう払拭したのかはよく覚えていない。むしろあれが怖さだったのかと思ったのは今になってだ。その時はとにかくやるしかないと腹を括るしかなかった。それでどうにかこうなか感覚を麻痺させて演じたのかもしれない。

 

こうやって今回の四方くんは誕生したのでした。これが正解だったかどうかはわからないけど、僕にとっては一つの答えでした。

この答えを、観ていただいたお客様にも楽しんでもらえていたなら幸いです。